第9章 どんぐりの背比べ
翌朝、さゆちゃんは一晩経って落ち着いたのか、僕に会うと昨日はカッとなってすみませんでした。と謝ってきた。
「…僕もごめん……でも、どんなに仲の良い相手でも男の部屋に1人で行ったりはしないで…」
「はい。じゃあこの件はこれで仲直りで。」
「うん。」
向かい合うさゆちゃんは僕の両手を取るとホッとしたように微笑んだ。
ここまでは良い。
問題はこの後だ。
「…本当に何もされなかった?」
「そんな…別に何もないですよ。」
「ほんとのほんと?本当に何もされてない?」
「ないですよ…少しからかわれたくらいです。」
段々と面倒くさそうに答えるさゆちゃんの言葉に聞き捨てならない単語が聞こえた。
「からかわれた?」
途端、その表情があからさまにしまった!といったものに変わる。思わず彼女の肩を掴んだ。
「からかわれたって何?!何されたの?」
「だからそんな囃し立てるほどの事じゃないですよ。手を少し引かれたというか……それだけです。」
「いやそれだけじゃないでしょ?!」
ガクガクと前後に彼女が肩を揺らすとあーっもうっ!と押し返された。
「それだけです!もうこの話はいいじゃないですか!」
「良くない!」
「アンタらいい加減にしろ!!!!」
起きてきた桃タローくんに怒られて、その場はおさまったけど結局また喧嘩をしてしまった。
そして今も絶賛継続中。
この件で新しく気づいたこと。
彼女は嘘が下手だ。