第1章 いつも通り
またやってしまった…。
さゆちゃんと付き合って3ヶ月。
他の女の子に声をかけているところを見られること15回目。
あれ?僕にしては少ない方じゃない?
まぁ実際に声をかけているのはもう少し(?)多いけれど。
いやいやそんな事はどうでもいい。
さゆちゃんのことは好きだ。
そりゃもう他の女の子に目がいかないくらい。
いっちゃってるけど。
そして見られちゃってるけど。
それでもやっぱり1番はさゆちゃんのつもりだ。
他の子とデートしてもついついさゆちゃんに似合いそうなものを見てしまうと手にしてしまう。
うっかりさゆちゃんに似合いそうと言ってしまい叩かれること数回。
彼女に似合う物をそのつど買うはいいけどいまだにひとつも渡せていない。
我ながら本当に好きな子にはずいぶん奥手だ。
さゆちゃんと付き合ってからは一応遊ぶのだって控えてる。衆合地獄に遊びに行ったりもするけど花札をしたりお酒を飲んだり本当に普通に遊ぶだけで誰かと一夜を過ごすこともしてない。
それでもあんな風に手をとってナンパしてるところを見られたのは非常によろしくない。
そもそもさゆちゃんには告白した日以来触れられてない。
仕事中たまたま手が触れる事はあるけどそれだけだし。どうも緊張しちゃって距離を開けてしまっている。
3ヶ月かぁ…
僕の浮気現場をこれだけ見て別れようとまだ一度も言われてないのは我ながらすごく不思議である。
さゆちゃんって本当に僕のこと好きなのかな?
僕が告白して勢いでokしちゃったとか…?
ぼちぼち恋人達のターニングポイント。
恐怖の3ヶ月目。
「別れたくないなぁ…」
ふと口に出すと一気に不安になってきた。
早く帰ってこないかな。
ケータイは相変わらず静かだ。
きっと彼女はまたあの地獄の鬼野郎のところに行っているのだろう。
そう思うとどことない恐怖と嫉妬心がこみ上げる。
とりあえず彼女からリクエストされた物を作ろう。ついでにとっておきのお茶も出そうかな。
それで。
それで今まで買った物でも渡してみよう。
ご機嫌取りみたいで引かれるかな?
とにかくなんとか、
なにか踏み出したいな。
ほかの女の子じゃないあの手に触れてみたい。