第6章 隣は友人、彼氏は物陰
店を出た時からずっとイライラしていた。
「何あれ?!絶対あいつ気付いてるだろ!!」
「ですね…」
かの地獄の鬼は、僕に見せつけんばかりにさゆちゃんと仲良くお茶をしたかと思えば、出る時にさゆちゃんの背中に手を添えた。
その後もだ。
さゆちゃんの顔に触れ簪をプレゼントなんてして。
簪といえば、僕が買ったものは結局あのデートの時浮かれて渡し忘れてしまっていたため机の引き出しのさゆちゃんへの渡せていないプレゼント達へ逆戻りだ。
こんなことなら渡しておけば良かった。
まさかあいつに先を越されるなんて…
しかも渡したそれがさゆちゃんに似合っていたことに、どことない怒りと焦りを覚える。
閻魔殿であいつがまたさゆちゃんに手を伸ばした時にはもう我慢ができなかった。
嫌がらせにしては度が過ぎていないか?
でもあいつは人が嫌がることを積極的にする地獄の鬼の中の鬼。
「私、茄子ちゃん達にお茶を淹れる約束しちゃったんで。」
僕の気持ちを知ってかしらずか、どちらにせよそんなことは対して気にしていないようで、帰ろうといったのにあっさりとフラれてしまった。
「じゃあ白澤さん、俺らも行きましょう。」
「やだ!!ここで待ってる!!!」
「駄々をこねない!」
桃タローくんにズルズルと引きずられながらふと顔を上げると、自分の目を疑った。
滅多に笑わない(むしろ笑顔なんて見たことない)あいつがニヤッとこちらを見てほくそ笑んでいる。
ブチィっと堪忍袋の緒が切れた。