第6章 隣は友人、彼氏は物陰
茄子ちゃん達にお茶を届け、閻魔殿へと戻ると、白澤さんと鬼灯さまが大喧嘩をしていた…
らしく、恐らく秒殺で負けたであろう、ボロボロで地面に伏せる白澤さんとその上に座る鬼灯さまがいた。
「いい歳した2人が何してるんですか…?」
「こいつが急に襲いかかってきたので僭越ながら返り討ちにさせて頂きました。」
隣で呆れている桃太郎くんに顔を向けると両の手のひらをこちらに見せ「お手上げ」とジェスチャーしている。
「なんでそんなことしたんですか白澤さん。」
「別に………」
屈んで聞くがプイッと顔をそらされてしまった。
「俺も聞いたんだけどさっきからこの調子で。」
「母親にしかられる小学生男子みたいですね。」
まったく…。
はぁとため息が出る。
「鬼灯さま、すみませんが立ってもらっても良いですか?」
「ええ。」
すっと立ち上がると鬼灯さまはやっぱりガタイがよく白澤さんより大きく見える。
「白澤さんがご迷惑おかけしました。多分ないと思いますけどお怪我はごさいませんか?」
「案の定ないのでご安心ください。」
怪我どころか鬼灯さまは服の乱れすらない。
さすがは地獄の鬼人にして鬼神…
反対に我恋人に目を向けるとズタボロのまままだ拗ねたようにうつぶせていた。
「白澤さん、ほら、帰りましょう?」
すっと手を差し出すとキョトンとした風に顔を見上げてくる。
「触っちゃダメなんじゃないの…?」
「私からはいいんです。」
白澤さんは、ぱあっと顔を綻ばせると手を掴み立ち上がった。
「じゃあ私たちはこれで。失礼しました。」
「ええ。また。」
「桃太郎くん、行こ?」
桃タローくんは隣を歩き、白澤さんは手を繋いだまま斜め後ろでハートを飛ばしながらついてきている。
「白澤さん、今日は特別ですからね、帰るまでの間だけです。引き続きお触りは禁止ですからね。」
「うんうん!」
白澤さんの顔は緩みっぱなしでちゃんと話を聞いているんだかいないんだか分からない。
それでもなんだかんだ、白澤さんが可愛くて憎めなくて、自分でも重症だなと思った。