第6章 隣は友人、彼氏は物陰
「ちょっと待ったぁ!!!!!」
一昔前のベタなドラマの様な声が閻魔殿に響いた。
さっきまで柱の陰に隠れていた白澤がズカズカとこちらに近づいてくる。
ちっと舌打ちが出てしまう。
彼女に触れようとしたのを某恋人に邪魔をされたことに。
そして恋心を自覚した途端、ほぼ無意識に彼女に手を伸ばしてしまっていた自分に。
「白澤さん…?と桃太郎くん…?」
「えっあっいやっこれは違くて…」
「俺は止めたよ?」
「桃タローくん!!」
「呆れた…ついてきたの?」
出てきたことによりつけていた事がバレたアホ神獣はうろたえている。それに呆れるさゆさんとの関係は恋人同士というより隠していたテストがバレた息子と母親のようだった。
「なんですか白澤さん。仕事の邪魔なので早急にお帰りください。」
「ああ!さっさと帰ってやるさこんなところ!さゆちゃん、帰ろう!」
「えっ?あーいや、私茄子ちゃん達にお茶淹れてあげる約束しちゃったんで。」
ドヤ顔をかましていた白澤さんはあっさりと帰宅を拒否されて雷に撃たれたような顔をしている。
いい気味だ。
「そういうことだから桃太郎くん、白澤さん連れて帰ってもらってもいい?」
「うん。サボった分ちゃんと仕事させておくから。」
さゆさんと桃太郎さんはお互い親指をグッとたてるとそれぞれ逆方向へ動き始めた。