第6章 隣は友人、彼氏は物陰
少しワガママが過ぎただろうか?
だが思ってないことは言っていない。
お茶くらい脇か懐に入れてもらえれば両手が塞がっていることなど関係なかった。
だがそれを口実にわざわざ閻魔殿まで来てもらったのだ。どうせなら最後まで思うようにしたい。
この感情に気づいてしまったからには自分に嘘をつくのも徒労だろう。
すぐに思いを告げる気はない。
彼女の気持ちはやっと距離が縮まってきた恋人で満たされているのだから。お触り禁止なんてプチ喧嘩はしているが明らかに白澤のことしか見えていない。
ゆっくり、ゆっくりでいい。
今よりも彼女との距離を縮めることを考えよう。
以前の、白澤との会話を思い出す。
残念ながら私も惚れてしまいましたね。
視界の隅にお茶を待ったさゆさんが慎重に歩いてくるのが見えた。長い距離を運ぶのはあまり慣れていないのだろう。
その真剣な表情を愛おしく思った。
白澤さんには悪いがとりあえず、今日だけでも独占させて貰いましょうかね。
「鬼灯さま〜!お待たせしました!」
お茶を机の上に置き、達成感に顔を綻ばせた彼女の頭に思わず手を伸ばした。