第6章 隣は友人、彼氏は物陰
「あ、ちょっと待っててもらってもいいですか?」
鬼灯さまに了承を得ると近くの茶屋へ駆ける。
店頭に置いてあったのは以前白澤さんが好きだと言っていたお茶だ。
今頃拗ねてるだろうからお土産でも買ってかなきゃね。
桃太郎くんにはお茶菓子、鬼灯さまには疲れにいいという漢方茶を買った。
「お待たせしました。あのこれ、良かったらってあー…持てないですね。」
鬼灯さまは片手に金棒、片手に肥料を持っているため両手が塞がっている。
「そうですね…」
鬼灯さまは自分の両手を見て少しだけ無言になるとすぐにこちらへ顔を上げる。
「さゆさん、この後お時間は?」
「え?あぁ、今日は全休ですけど…」
「ではせっかくなので閻魔殿まで一緒に来てそのお茶を入れてください。」
「私がですか?!」
「えぇ。では行きましょう。」
そういうと鬼灯さまはこちらの返事も聞かずに歩き出してしまう。
まぁいいか。
少し駆け足で追いつくと鬼灯さまの横に並ぶ。
こうして並ぶと鬼灯さまは背が高く男らしい。
見上げていると視線に気づいたようで軽くこちらに顔を向けてきた。
「なにか?」
「いえ、鬼灯さまって身長いくつでしたっけ?」
「185くらいですね。」
「えっ白澤さんと同じ?」
白澤さんの名前を聞いた瞬間露骨に嫌そうな顔をする。白澤さんも鬼灯さまの名前を聞くと同じような顔をする。本当に似てるけど仲悪いなぁ。
「そうなんですか?」と聞いてはくるものの明らかに興味はなさそうだ。
「たしかそうですよ。でも鬼灯さまの方がガタイが良いから大きくというか男らしく見えますね。」
「私はいつでもチェンジして良いですよ。」
「ガタイの良い白澤さんとか想像できませんね…」
「そっちじゃないですよ」とツッコまれ、同時にガタイの良い白澤さんを想像して思わず吹き出す。
笑いながら似合わないなぁとつぶやき、顔を上げると閻魔殿に着いていた。