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距離感がおかしい

第4章 デート回





「あの…白澤さん…?」
「ん…?な、なに…?」
「えっと……その…せっかくなので、手、繋いでもいいですか?」

いいに決まってる。

「あ!ちょっと待って僕いま手汗やばいから…!!」
慌てて服でゴシゴシと手を拭くとさゆちゃんがふふっと笑う。あーもぅかわいいなぁー。

「大丈夫ですか?」

そういうとスッと手を出してくれた。

「うん、でも、うん、まだ湿っぽいと思うけど…ごめんね…」
「ふふっ、大丈夫ですよ。」

差し出された彼女の手に自分の手を重ね、握る。

手を繋ぐなんて今時カップルじゃなくったってやる。そんな事なのに彼女と触れている手に全意識がいってしまいそうだ。

僕の手より少し冷えた彼女の手が気持ちいい。

「なんか…ごめんね、いつもリードしてもらってばっかりで…」
「いいえ。確かに白澤さんから誘われたい気持ちもありましたけど、今こうしていられるだけで、声かけて良かったなって思います。昨日も、今も。」

さゆちゃんが僕の目を見て優しく微笑む。月明かりに照らされた彼女は余計に綺麗に見える。

「付き合った時のこと、覚えてます?」
「もちろん。さっき、会うまでずっと思い返してた。」
「私もです。」
「僕がさゆちゃんといると、何かと緊張しちゃって、それで僕がさゆちゃんのこと嫌ってるって誤解させちゃって…」
「えぇ、でもその後、白澤さんがちゃんと気持ち言ってくれて、凄く嬉しかったです。」

優しく微笑む彼女の表情と言葉に胸が熱くなる。

「ももタローくんには本当に凄く助けられたな…」
「ふふっ、ですね。」

ゆっくりと立ち止まるとさゆちゃんが僕のもう片方の手をとって見上げてくる。

「前にも言いましたけど、ゆっくりで良いんです。でも、前みたいなのは嫌です。距離、ちゃんと縮めたいです。」
「…うん。」
「とかいって私もサボっちゃって、ごめんなさい。だから…その…また今日から振り出しって事で。次は白澤さんから誘ってもらっても良いですか…?」
「うん、ぜひ、僕から誘わせて。」

なんて事のない口約束かもしれない。しかも僕の口から出た言葉じゃ信用ならないかもしれない。

それでも僕は本気だ。だからこの気持ちがちゃんと伝わるように、彼女の目を見て一言一言、大切に言った。

彼女の小さな勇気に、次は僕が答える番だ。

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