第1章 いつも通り
今のままも悪くないです。
白澤さんが他の女の子にちょっかいを出さなければ。
わかりきっていたことですけど。
でも、
それでもですよ?
白澤さんは私に触れるのはドキドキしてしまうと中学生男子みたいなことを言うけれど、
それは特別感があっていいけれど、
でも、でもねぇ…??
私は触れたいしぎゅっと抱きしめてもらいたい。何ともなく手を繋いでいたいとか思うわけですよ!
スプーンを握る手に力が入ってしまう。
向かいに座る鬼灯さまは甘味を堪能しながらいつものすっとした目で私の愚痴を聞いてくれていた。
桃太郎くんはシロちゃん達と散歩をするとのことなので17:00に地獄の入口に集合ということで解散した。
「あの豚も本当に懲りないですね。」
「まぁ、ある程度は予想してたんですけどね…外れて欲しかったです。」
「今からでも遅くないですよ。私にチェンジしませんか?」
「やっぱりチェンジですかねー」
こちらもいつもの流れだ。
鬼灯さまも私も勿論本気ではない。
初めて会った時はもっとお堅い人だと思っていたけれどサクサクとして話も上手い。白澤さんとは仲が悪いみたいだけど仕事で何度か会話をしているうちにすっかり仲良くなっていた。
「貴重な休憩時間を付き合わせてしまってすみませんでした。毎度毎度ありがとうございます」
「いえ。私も息抜きになりますしいつでも。」
「ちなみにさゆさん、このあとの予定は?」
「あー久々に来たしふらふら買い物でもしてこうかなって。」
「なら付き合いますよ。といってもあと30分ほどですけど」
「えっ?いいんですか?鬼灯さまただでさえ忙しいのに」
「言ったでしょう。あなたに会うのは私の息抜きにもなっているんです。
場所は決まっていますか?もし決まっていないのなら新しくできたお店がありますよ。」
「え!行きたいです!ありがとうございます!」
お会計を呼びお財布を出すとお札を崩したいと鬼灯さまがまとめて払ってくれた。
のはいいんだが私からお金を受け取ってくれない。
「私が話に付き合ってもらったんですから私が払います!!」
お金を鬼灯さまに押し付けようも「聞こえませんね」と一蹴されてしまった。
「行きましょう。時間があまりないので。」
なんてこった…これが出来る男か…
アホみたいに関心しながら鬼灯さまに続いてお店を出た。