第3章 馴れ初め
「あの…あのね………?」
どうしても言葉が続かない。
さゆちゃんは不安そうな顔で僕を見ている。
「あの!僕……!
………………………………………………………………………………………………薬草とってくるね…………」
肩を落とし、ため息をつきながらドアを出た。
あーもうやだ…。
きっと桃タローくんも呆れてるだろう。
養老の滝のところまで来てその辺の岩に座った。
またため息が出る。
ポケットでケータイが鳴る。切ろうと思って取り出したけどかけてきているのは桃タローくんだった。
慌てて出る。
「もしもし?!」
「…今どこにいます?」
「えっ養老の滝だけど…」
「わかりました。ちょっと待っててください。」
電話が切れる。
えっ?なに今の?
5分もしないうちにまたケータイが鳴った。
「もしもし…」
「今さゆちゃんそっちに行かせました。」
「え?!!!」
「ちゃんと伝えなきゃダメですよ。自分の中でため込んでても時間と気力の無駄です。さゆちゃんにもそう言いました。」
「でも…」
「好きなんでしょう?だったら悲しませちゃだめでしょ。」
「……………わかった…」
ありがとうと言って電話を切る。
本当によくできた弟子だ。
『好きなんでしょう?』
うん、大好きだよ。
『だったら悲しませちゃダメでしょ。』
本当だね。
桃タローくんの言葉が頭の中で繰り返される。
そうだ、告白はまだしなくていいんだ。でも誤解だけは解かなきゃ。
しばらく待っているとさゆちゃんがこちらへ走ってくる姿が見えた。
岩から腰をあげる。
僕の前にくると膝に手を当てて息を切らしている。
「大丈夫…?」
「……はぁ…久々に………走ったので…………」
呼吸を少しずつ落ち着けている彼女を見てまた胸が熱くなる。
走ってきてくれた。
逃げてばかりの僕のところへ。
嬉しくて、愛しくてたまらなくなる。
僕は自分の事にいっぱいいっぱいで、そのせいでどれだけ彼女を傷つけたのだろう…。
「白澤さん…!私………」
「まって!僕に言わせて!!!」
えっ?とまだ少し早い息遣いのさゆちゃんが顔をあげる。声が裏返ってもいい。僕から言わなきゃ。