第3章 馴れ初め
「桃太郎くん…私、白澤さんに嫌われてるかもしれない…」
「は?」
外出から帰ってお店のドアを開けようとした時だった。中から聞こえてきた会話に血の気が引いた。
「いやいやないない。それはない。」
「だって…!他の子と前から態度違うなとは思ってたけどそれは一応私が弟子だからかと思ってたのに桃太郎くんと私への態度もあからさまに違うもの!」
「いやそりゃ男の俺とさゆちゃんへの態度は別でしょう。」
「いやでも違くて!最近の白澤さんなんか私のこと避けてるっていうか…!あぁ〜〜私なんかしちゃったかなぁ?!」
「……あのバカ…」
机に突っ伏すさゆちゃんと状況を理解した桃タローくん。えっ僕これ中入っていった方が良いかな??今すぐにでも誤解だ!と言いたいけど「じゃあどうして?」って理由を聞かれたらそれってもう告白するしかなくない?
好きです。僕と付き合わない?
何千何万と言ってきたセリフが言える気がしない。
もしフラれたら…?さゆちゃんならそんな事はないと思うけどお互いギクシャクして最悪さゆちゃんがここから出て行くとか言いだしたら…?
そんなの耐えられない…
想像するだけでぞっとする。
でもこれどうしたらいいの?
「とにかく、白澤様がさゆちゃんのこと嫌うなんてありえないから。俺が保証する。安心して。」
「うん…桃太郎くんがそこまで言うなら…」
桃タローくんありがとう…でもまだ彼女の顔は曇ったままだ。
どうにも中に入れる気がしなくて、メールを入れてその日は地獄に泊まる事にした。