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距離感がおかしい

第3章 馴れ初め




自分の恋心に気づいてからの僕は酷いもんだった。


目が合えばそらし、手が触れれば慌てて離す。話しかけるのもぎこちなく、桃タローくんが出かけて2人でいる空間に耐え切れず何かと理由を付けては外出した。

そうして衆合地獄へ行っては気を紛らわそうと遊びまくった。

でもどんなにかわいいこと遊んでも、どんな美人を抱いても、脳裏に浮かぶのはさゆちゃんの顔なわけで。



衆合地獄をうろついているときにさゆちゃんに会った時があった。隣にはあいつがいた。

「白澤さん…!帰ってこないと思ったらやっぱりここにいたんですね?!ケータイ連絡入れても返信ないし!!私も桃太郎くんも心配したんですよ?!」
「えっ?あ、本当だ。ごめん…」

怒ってる顔もかわいいなぁ…にしてもこんな所で遊び歩いてるとこを見られるなんて…

「さゆさん、やっぱり地獄へ来ませんか?あなたの書類のまとめ方、すごく綺麗なのでぜひ。」
「褒めても何も出ませんよ。でも考えておきます。」

冷ややかな目で僕を見るさゆちゃん。
話を聞く限り今までにも何度かあいつに地獄にこないかと誘われていたのだろう。考えておきますだなんて冗談だと分かっていてもショックを受ける。
やめてくれ、そんな奴の隣に立たないでくれ。

僕の所から去り、地獄であいつと仕事をする彼女を想像しただけで胸が苦しくなった。

「誰がお前のとこになんてやるかよ!さゆちゃん、帰ろう!」

彼女の腕に手を伸ばす。

いや、正しくは伸ばしかけてすぐ引っ込めた。
さっきまで他の女の子に触れていたこの手で彼女に触れるのに抵抗を感じたのだ。

「…行こう…」

下を向いて天国へ通じる門へと向かう。

「ちょっと白澤さん待ってください…!鬼灯さま、忙しいのに探すの手伝ってくれてありがとうございました。今度何かご馳走させてください。」
「えぇぜひ、いつでも。」

シカトしてスタスタと歩いていたが2人の会話をしっかりと聞いていた。

わざわざ探しに来てくれた嬉しさと、そのお礼にあいつと食事に行くという事への怒り。



どこにも行かないでほしい。

僕のそばにいてほしい。

僕だけを見てほしい。

僕だけに笑ってほしい。




なんておこがましいんだろう。

そんなこと言えるわけもなくて、口を強く結んだ。



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