第3章 馴れ初め
柔らかな頬と髪の感触が手にある。
「白澤さん…?」
名前を呼ばれてハッと我に帰り慌てて手を離す。
「ご、ごめん…!!」
「いえ、別に。」
さゆちゃんは優しく微笑むと額に当てていた手で僕の頭をそっと撫でた。
こみ上げるものを感じる。今までのもやとは違う。けどどこか胸が苦しかった。手を掴みたい衝動に駆られるが体が動かない。
「じゃあ、私は行きますから。ゆっくり寝てくださいね。何か欲しいものあったらケータイででも呼んでください。」
「うん……ありがとう…」
寝室のドアが閉まる。
はぁーっと大きく息をはき、ベッドに大の字になると胸のつまる感覚が少し和らぐ。
まさか…まさかねぇ…?
自分の中である仮説ができていた。
でも
僕が?
自分で言うのは何だけど僕はあくまで女の子みんなが好きなわけで特定の女の子に好意を寄せることはなかったはず。
いやいやいや…
そんなわけないと布団に包まる。
気のせい、気のせいだ。
そう思えば思うほどさっきまでのさゆちゃんの優しい顔や頭を撫でられた感覚が思い出される。
なんだか僕が僕じゃないみたいで、怖くて認めたくなかった。
数日後、また2人きりのとき桃タローくんに「こないだの話、俺じゃなくて白澤様こそさゆちゃんのこと好きですよね?」と言われお茶を吹き出すまでは。