第3章 馴れ初め
「なんでそいつがいるの……」
「えっあぁ…」
さゆちゃんがあいつを見上げ、あいつもさゆちゃんを見る。今にも「私たち付き合うことになりました。」なんて言い出しそうなくらいお似合いなカップルに見えた。吐き気がしてくる。
「シロちゃん達が桃太郎くんに会いたくて、鬼灯さまに頼んでここまで連れてきてもらったらしくて…私とは帰ってくる途中あったんです。」
「そう……」
それを聞いてまたなんとなくホッとした。
「それよりも白澤さん大丈夫ですか?」とさゆちゃんがこちらへ寄ってきて僕の肩に手を添えるように触れる。
瞬間、体がビクッとした。
「あっ…」
「えっ…」
さゆちゃんが少し驚いたように僕を見ている。でも驚いているのは僕も同じだ。
慌てて笑顔をつくると「ごめんね、昨日お酒飲みすぎちゃったかも…ちょっと寝るからお店は今日はもう閉めちゃっていいよ…」と言っておそるおそる僕の肩に触れている彼女の手に伸ばした。
手を重ねる。
肩と手の彼女に触れているところにばかり意識がいってしまう。
「辛そうですね…部屋まで送りますよ。」
「いや…でも悪い…「ぐだぐだ言わない。」
言いかけた言葉は彼女にぴしゃりとかき消される。
「鬼灯さま達は適当にくつろいでてください。」
顔だけを後ろに向けそう言うと「行きましょう」とドアを開けてくれた。
僕の寝室につくまで会話はなく、自分の鼓動の音だけがうるさかった。
なにこれ。やばくない?さゆちゃんに聞こえてないかな?てか肩にまだ手が触れてるからそこからバレそう…
そんなことをぐるぐる考えているとすぐ寝室についた。まぁ、元々そんなにお店と離れてないんだけどね。
部屋についてベッドに座らされる。これ普通シチュエーション的に逆じゃない?でも座っているのは僕だ。さゆちゃんは相変わらず心配そうに僕を見ている。
「熱とかじゃないですよね?本当に大丈夫ですか?」
僕の額に彼女の手が触れた。
「…さゆちゃん……」
「あ、ごめんなさい、白澤さんここにも目あるん…」
頭がボーッとしている。
気づけば彼女の頬に手を伸ばしていた。