第3章 馴れ初め
桃タローくんと僕らは結構すぐ打ち解けた。
はじめはさゆちゃんと2人の空間に入ってこられるのに抵抗を感じたが、桃タローくんもさゆちゃんも中々勉強に仕事に熱心で、今では2人が可愛くて仕方ない。
相変わらず女癖の悪い僕に呆れて文句をいいながらも優しく迎えてくれる。2人のところに帰る足取りが軽い。弟子ってこんな良いもんだったのか。
増設工事が終わり極楽満月に戻ってからしばらくも変わらない。さゆちゃんと2人きりだったときと変わらない心地よい空間。
それでも、それでもさゆちゃんと桃タローくんが僕のいないところで(まぁ良く遊びに出てるからいないことは多いけど)2人が楽しそうに談笑してるのを見るとモヤモヤとしてしまう。
疎外感?
すごく楽しそうだ。笑顔の2人に師匠心としては可愛らしいと感じる反面、例の感覚。
さゆちゃんの笑顔は相変わらずかわいい。でもその笑顔は僕へのものじゃない。
桃タローくんも僕にはあまり向けない笑顔をしている。
…………
「桃タローくんてさ、さゆちゃんのこと好きなの?」
「は?」
例のモヤモヤを抱えて数日、2人きりのときに思い切って聞いてみた。
「ん〜好きっちゃ好きですけどあくまで同僚としてと言うかヒトとしてと言うか…」
「嘘だね!!この間僕に向けないような笑顔してたもの!!」
「そりゃあ仕事ほったらかして遊びに出かける女癖の悪いちゃらんぽらん上司とかわいくて優しくて真面目な同僚の女の子に向ける笑顔は違うに決まってるでしょう。それに俺は古風美人がタイプですから。」
「なるほど。」
すぐ理解した。僕だってヤローと女の子に向ける笑顔は別物だしね。なーんだホッとした。
……何に?
自分に聞き返す。何にホッとしたんだ?そもそも桃タローくんが恋愛対象としてさゆちゃんを好きだと答えたら僕はどうする気だったんだろう。
胸のなかにまた例のモヤモヤが生まれる。
またこれだ。
何千年、何万年も生きてきた。存在してきた。
その中でもあったようななかったような感覚。
「そういえば」
ぼーっと考えていた僕に桃タローくんが話しかける。
「白澤様ってさゆちゃんのことは口説かないですよね。」