第3章 馴れ初め
薬草を煎じているときだった。
「いらっしゃいま…せ…?」
表に干してある薬草を取りに行っていたさゆちゃんの声が疑問系になって行くのが聞こえ、気になってドアから顔を出した。
「さゆちゃん?どうし…ってげっ」
そこには見慣れた地獄の鬼神。冷血にして冷徹。因縁の相手とも言える奴が立っていた。
思わずさゆちゃんの手を引いた。
「白澤さん!」
「…あなたは女性に雑用もさせているんですか…?」
「そんなわけないだろ。この子は正式な僕の助手だよ!ここで働いてもらってるの!!言っとくがそういう関係じゃないからな!!何もしてないし!」
「ほーぉ?あなたがねぇ…」
「僕だって節度はわきまえてるよ!」
奴は心底どうでもいいという顔をするとすっとさゆちゃんに顔を向けた。
「それは失礼。私は閻魔大王第一補佐官の鬼灯です。」
「あ、最近こちらで働かせてもらってる高澤さゆです。」
「お香さんづてに最近このアホ神獣に助手ができたと聞きましたがあなたでしたか。」
「お香さん…?」
「衆合地獄という地獄の統括をされている方です。地獄の花街のようなところです。」
「なるほど。」
僕がいないみたいにあいつとさゆちゃんだけで話が進んでいく。何となくだがこいつにはさゆちゃんを会わせたくなかった。いつまでもは無理だとしてもこんなに早く知り合うことになるとは…。
何これ。面白くない。
さゆちゃんの肩を抱き寄せて睨みつける。
「ちょっ白澤さん…?」
「何の用なの?」
「ああ、すみません。あなた以前桃源郷の芝刈り人員を募集していたでしょう。使えそうな人を連れてきました。」
そのとき、はじめて奴の後ろにもう1人、人がいた事に気付く。
「桃太郎さんです。」
「本物?!」
食い気味のさゆちゃん。
そういえばそんな要請もしていたな…
「先日地獄に鬼退治に来られたんですがかくかくしかじかでこちらへの就職を勧めたいのですが。」
「退治できてないどころか斡旋してもらっている…!!」
「如何でしょう」
「うーんそうはいってもねぇ…うち結構狭いからもう人が住むスペースないよ?」
「あ、じゃあ私前に住んでいた所から通いますよ?そんなに遠くないし。」