第12章 愛しい人へ(中編)
それから
「それから、新しく、君と同じように愛せる人ができて、結婚して、子供も産まれたんだ。」
「うん。」
「子育てって結構大変で、でも楽しくて、その子供も大きくなって」
「うん。」
「それとは全然関係ないんだけど、家の近くの急な階段で、足を滑らせてね。本当に情けないけど、それで死んだんだ。」
「そっか…」
妻には、いや、妻にも、誰にもさゆを殺したことは言わなかった。
言ってはいけない気がて。
言って、もし許されてしまったらと思うとゾッとしたんだ。
誰にも許されたくなかった。
「君にもね。」
「まぁ、私も共犯みたいなもんだけどね。」
死ぬまで自分1人で抱えて苦しもうって誓ったんだ。
「でも、それも君のおかげだよ。」
君の手紙に生かされた。
直接的には書いていなかったけれど、強く生きろと言われれている気がした。
「生かしてくれてありがとう。君のおかげで、ようやくここでちゃんと罪を償える。」
「……なんか、私だけ天国行っちゃって悪いね。」
「それがきっと君の罰だ。」
「…ありがとう。
私にも罰をくれて。
生きててくれて。
手紙、読んでくれて…
ありがとう…」
不謹慎かもだけど、手紙を、私を失って泣いてくれたの、嬉しかったよ。