第12章 愛しい人へ(中編)
「…………」
あぁ…
ようやく、ようやく私や白澤さんがどうして彼女に惹かれているのかわかったかもしれない。
何万、何億年前と1人で生きてきた神獣。
愛を受けぬまま、怨みの末に鬼となった私。
私達はどこかふわふわしていて、それでもそれでいいと思っていた。
けれど
清らかで重いくらいの愛を、命をかけられるくらいの愛を、彼女が持ち得ていると、無意識に気づいてしまったのだ。
揺るぎのない愛を、与えて欲しいと思ってしまった。
己を殺した元恋人と、彼女は優しく手を取り合い、抱擁する。
互いに別の恋人に出会った彼らの間には、もう恋愛感情はないのだろう。頬に流れる涙は生き別れた家族に再開したようで。
恋愛感情はないにしろ、そこには愛が溢れている。
酷く清らかなその空気に、場にいる全員はただただ無言で、それを見つめていた。