第12章 愛しい人へ(中編)
『今日も生きてくれてありがとう。
明日は買い出しに行ってください。
ご飯はバランス良くね。』
「今日も生きてくれてありがとう。
私の葬式ってもうした?
いつになってもいいので骨はおしゃれに海に撒いてください。』
『今日も生きてくれてありがとう。
貴方がちゃんと読んでれば1ヶ月が経ったと思います。漫画や本は読まないようなら捨てないで売ってね。』
『今日も生きてくれてありがとう。
そろそろ新しい彼女くらいできましたか?
貴方のあのメガネ、ダサいから一緒に選んでもらったほうがいいと思う。』
『今日も生きてくれてありがとう。
ネタがなくなってきました。
楽しかったことはメモしておいて下さい。
私は今日は貴方とサイクリングに行きました。覚えてる?』
『今日も生きてくれてありがとう。
貴方がちゃんと読んでくれてれば3年経ったと思います。3年もこんなもので縛ってしまってゴメンなさい。
これで最後です。
ありがとう。
自分の意思でこっち来たら許さないから。』
どんなに他の場所を探してみても、本当にもうどこにも彼女の手紙は見つからなかった。
「終わったのか……」
長い小説を読み終えたような気分だった。
「……寝よう。」