第11章 愛しい人へ(前編)
「鬼灯さま、はじめの問いに答えましょう。もし今、彼に会えるなら、私は会いたいと思います。」
まっすぐとしたその目は、私の頭を考えを、強いてはかの故人が彼女に会いたがってる事さえ見抜いているかのようだった。
「そうですか。」
彼は幸せですね。
頭に浮かべどそれは声になることはなかった。
代わりにそっと、彼女の頭を撫でる。
「白澤さん、お店にいらっしゃいますか?」
「ええ、たぶん。」
では、と立ち上がり、彼女に手を差し出す。
当然のようにその手を取り立ち上がる彼女は、やはり私を意識しているようには見えない。
「私はもう少し芝刈りして帰ります。やりたいとこまで終わってないので。」
「分かりました。お伝えしておきます。」
喧嘩しちゃダメですよと彼女は相変わらずの笑顔をこちらへ向ける。
美しい景色の中、光を浴びる彼女は絵の中にいるかのように美しく、遠い。
近くにいるのに、手では触れられるのに、その絵から彼女が私へ想いを返してくれる事はない。
「では、また。」
私は何がしたいのだろうか。
あの男のため?
彼女のため?
その結果が、彼女とあの男が会う事で出るのだろうか?
動機は分からなくても身体は動く。
これはきっと必要な事なのだ。
自分の気持ちを、彼女への想いをこれからどうするのか決めるために。
あぁ、なんだ。
これは間違えなく私のためだ。