第11章 愛しい人へ(前編)
「電話がさ、かかってくるんだ…大学時代の親友から、同じサークルだったやつが死んだって…俺、サークルの中ではそいつと結構仲良かったんだよ…でも、全然悲しくないんだ…」
「でも…それは夢だから…」
「違う、先生の時もなんだ…「そっか…」くらいしか浮かばなかった……わからないんだ。だって会えなくなるだけっていうか、何も変わらないって言うか…わからない…なんで…俺薄情なのかな…?」
「そんなことないよ、ほら、漫画とか映画とか見たときはよく泣いてるじゃん…?」
「あれはたぶんシチュエーションが悲しいんだ…でもダメなんだ…わからないんだ…」
「……」
「オレ、怖いんだよ…いつかさ、親とか、親戚とか、お前とか、そういう本当に近い人が死んだとき、ちゃんと悲しめないんじゃないかって…自分がそういう奴なんだって、自分でそれを知ってしまうのが心底怖いんだ…」
「……」
「それで…それでたまに思うんだよ…そういう奴が死んだらどうなるんだろうって…でもどんなに考えても同じリアクションの自分しか浮かばないんだ……それで……
それでいつか人を殺しそうで怖いんだ……」