第11章 愛しい人へ(前編)
彼はとても優しい人でした。
同僚の紹介で知り合ったんですけど、お酒とか映画の趣味とかも合って、一緒にいて気楽で。
付き合って、一緒に住むようになってから2年くらいかな。彼のね、恩師が亡くなった時でした。
凄く落ち込んでて、声かけたんですけど、「大丈夫」しか言わなくて。
そっとしておくことにしたんです。
それから数日経って、夜中に彼が隣で泣いてて、聞いたら友人が死ぬ夢を見たって。
夢だから大丈夫だよ、怖くないよって声をかけたんですけど、そしたら違うって。
「全然悲しくなかったんだ」
彼は泣きながらそう言いました。