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距離感がおかしい

第11章 愛しい人へ(前編)









「あなたが地獄のお偉いさん?私のわがままにどうもすみませんね。」


罰が悪そうに笑う件の亡者は、落ち着いた40代くらいの男だった。


「迷惑だとわかっているなら素直に指示に従ってほしいのですが。」

「いやー私もこればっかりはね、なんとかしたくって。」


そこをなんとかと軽々しく頼む男に嫌気がさす。
頼む方は軽い気持ちかもしれないがこちらにはストレス増し増しの重労働だ。


「できませんね。そもそもあなたの探している人はもう転生してこちらにはいない可能性の方が高いですし。」

まぁ、天国行きの方だったらの話ですが。

「彼女が地獄に堕ちるはずありませんよ。でもそうか…転生って本当にあるんですね。困っちゃうなぁ…そしたら人殺しを自白したのが損になってしまいますね。」

「いずれにせよ我々が全て洗いざらい調べるので殺人を犯した事実は分かるし貴方は地獄へ堕ちます。何も変わりません。」


うーんどうしようと腕を組む男は、悩んでいるようには見えても一向に折れる様子はない。

そろそろ実了行使といきますか。
時間がおしい。


「もう宜しいですか?今すぐあちらの待機列へ戻ってください。」

ぱらぱらと砂を落とす金棒を男の頭上へと持ち上げる。

「わぁ!あなた意外と手がはやいんですねってそうじゃなくて…待ってください。転生したかどうかだけでも確認できないんですか?全ての死者のリストに一度は目を通してる人とか…!」

「私です。おかげで仕事が山積みなんです。あなた1人に構っている時間が惜しいので戻りなさい。」

「ぐ…っ!」


まずは軽く一撃。
金棒を亡者の肩へと振り下ろすと、衝撃のまま地面に倒れこんだ男は鈍痛を得ているであろう肩を抑え唸る。


「次は鳩尾に入れます。」


ジャリっと自分の草履が地面を鳴らす。
もう一歩近づけば、男は肩を抑えていた手を外し、地面に両手をつくと、土下座の形をつくりだした。



「……お願い…します…」

「嫌ですね。」

「彼女を…」

「存じ上げません。」



「………高澤………」




………





え?









「彼女を…高澤さゆを…知りませんか……?」










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