第18章 居残り練習
「なーにやってんのよ。優希。」
「…実渕さん。」
急に体育館に入ってきた、実渕を振り返り、視線を反らす。
「あんたにしては、珍しいじゃない。こんなにシュート外して、こんな時間まで残ってるなんて。寮にちゃんと届けてるんでしょうね?」
「…え?………あー…もうこんな時間だったのか…。」
私は、体育館の時計を仰ぎ見て、頭を掻く。
「こんな中途半端に練習しても、シュートなんて入りっこないじゃない。
何か心乱されることでもあったわけ?」
体育館に転がるボールを、ひとつ拾い上げ、実渕さんは私が散々外したゴールに、シュートする。
美しく弧を描いて、ネットの揺れる音が響く。
「…美琴ちゃんのことでしょ。
美琴ちゃん、今日の練習中に、ボール頭にぶつけて、保健室に運ばれたって?」
「…よく知ってますね、実渕さん。」
「そりゃ、うちの征ちゃんが、一目散に保健室に行っちゃったもの。」
そこで、そういえば保健室から体育館に帰る途中、赤司さまとすれ違ったのを思い出した。
「征ちゃん、よっぽど美琴ちゃんが好きなのね。練習終わったら、いつもの自主練に参加なんかしないで、急いで美琴ちゃんを迎えに行ったわよ。」
実渕さんは、美しく笑いながら、また床に転がるボールを拾いシュートする。
また、静かな体育館に、ネットの揺れる音が響いた。