第16章 友情の亀裂
[美琴]
「美琴さん、あなた本当に、征十郎さんの婚約者になる気はあるの?」
朝練の後、私は香澄さんに呼び出され、バスケ部の備品室にいた。
「…あの………はい。」
私は、香澄さんの威圧的な雰囲気に気圧されて、壁に後ずさりながら答えた。
「…なんで、そんなに自信なさげにお答えになるの?
ふふ。でも…、あなたの征十郎さんへの思いなんて、たかが知れてる。」
「え?」
香澄さんが微笑みながら腕を組んで、私を見つめる。
「本当に、征十郎さんの婚約者になりたいなら、女子部のマネージャーなんてならないわ。
一番近くで、彼を支えたいって思うものなんじゃないかしら。
私は、男子バスケ部のマネージャーとして彼を支え、ゆくゆくは彼の婚約者として、正式に決めてみせる。
それだけ言いたかったの。
では、失礼。」
香澄さんは、綺麗に笑って備品室から出ていってしまった。
私は、香澄さんの言っていたことに衝撃を受けてしまった。
「……征十郎さんの婚約者になるには、男子バスケ部のマネージャーの方がいいっていうの?」
私は、どうしていいか分からず、その場から動けないでいた。