第16章 友情の亀裂
[征十郎]
練習を終え、レギュラー陣と一緒にジムへ行こうと校門の前で集まっていると、香澄が俺の腕に抱きついてきた。
「征十郎さま、どちらに行かれるんですか?私もご一緒して宜しいかしら?」
俺は不快に眉を寄せ、香澄を払い除けた。
「俺に触れるな。」
以前の俺が、顔を出しそうなのが分かる。
俺は彼女を無感情のまま見つめ、視線を外す。
「行こう。」
そういって、先頭を歩く。
「あ、赤司。おい、いいのか、あれ?」
葉山が戸惑いながら、俺の後を着いてくる。
「……ま、変な気を持たせるより、マシなのかもしれないわね。」
実渕は、ぼそっと呟きながら俺の後ろを歩く。
俺は、前を歩きながら、香澄を頭から消した。
夏の暑さを予感する、夜の生暖かい風が、香澄の感情を高ぶらせる。
「……そんなに美琴さんがいいの……?」
俺は、彼女の呟きなど聞きもせず、IH2連続優勝に向け、トレーニングに向かっていた。