第14章 魔法が解ける時間
窓際の席に、美琴がいない。
美琴の兄の姿もない。
2人でどこかに行ったかと、会場を巡らせると、美琴の兄が会場の入り口に立っていた。
俺は、小走りで近づく。
「美琴さんは?」
「…少し具合が悪くなったようだ。これだけ大きいパーティーにはあまり出席させたことがなかったから、疲れたんだと思う。
今私の部屋で休んでいるよ。」
「迎えにいきます。」
「いや、今日はこのまま私の部屋で休ませる。
君は一人で帰ってくれ。」
勝さんの拒絶は明らかな敵意を感じる。
俺は、さっき会った女子を思い出す。
「……不快な思いを、彼女にさせてしまいましたか?」
俺は、強い意思をもって、勝さんに対峙する。
すると、勝さんは、一息ついて話し始めた。
「……私には、後、2人兄弟がいるが、全員男でね。美琴は、我が家で1人の女の子だ。年も離れていて、私は美琴が可愛くて仕方ない。
だから、君との縁談は、快く思っていなかったよ。
でも、美琴は、私たちの反対を押しきって、君に会ってみたいと、ここに来たはずだったんだが……。
今日、君の婚約者候補にあったらしい。
…あのままの美琴を残して、私は帰国出来ない。父にも話して、美琴は連れて帰るよ。」
俺の日常から美琴がいなくなる……。
美琴と過ごす、暖かい時間がもうなくなる……。
俺は、勝さんを押し退けて、美琴がいる部屋へ向かおうとする。
すると、勝さんに腕を掴まれた。
「…離せ。…俺に逆らうものは、親でも殺す…。」
勝さんは、俺の腕を離した。
俺は会場を後にし、美琴がいる部屋へ急いだ。