第14章 魔法が解ける時間
[美琴]
ドイツにいたとき、お兄ちゃんたちに、沢山反対された。
『お前が望まれて、お前も望んだ相手なら、俺たちは認めてもいい。
だがお前は、大勢の候補の1人でしかないんだぞ?それでも行くのか?!』
私は、写真の中の彼しか知らないけど、会ってみたい・知ってみたいって思ったから。
覚悟してきたつもりだったのに……。
空港に迎えにきてくれた。
桜咲く京都の町を、一緒に歩いて。
学校での赤司さんは、みんなの憧れの的で。
私の中に、少しずつ膨らむこの気持ちを、どうしたらいいのかな…
自信がなくて揺れる気持ちを、どうしていいのか分からず、私は、部屋の窓を見ていた。
コンコンコン。
「…?お兄ちゃん?」
でも、兄なら鍵は持っているはずで、私は不思議に思いながら、扉を開けた。
「…誰?」
「美琴」
扉の向こうに、赤司さんが立っていた。
ビックリしている間に、彼に抱き締められていた。
扉が締まり、私たちは部屋の中に入っていた。
「?!ぇ?……あ…かしさん?」
私は急に目の前に現れ、私を抱き締める赤司さんに、頭が混乱する。
「……いなくなるな。美琴。」
赤司さんの息づかいが、私の耳をくすぐる。
「あ、あの…赤司さん。」
「…征十郎だ。呼ぶんだ。」
赤司さんに後頭部を包まれて、距離が取れない。
今、彼はどんな顔をしているのか…。
でも、いつもの赤司さんと違う。
心配も、沢山させてしまったみたいで。
私は、勇気を出して、呼んでみた。
「……征十郎さん。」
彼の胸に顔を埋めていたから、くぐもった私の声。
聞こえたか不安になるけど、私を抱き締める腕が、強くなるのを感じる。
「…俺の部屋に行こう。来て。」
赤司さんに手を取られ、私は兄の部屋を後にして、廊下を歩いた。