第14章 魔法が解ける時間
[征十郎]
挨拶を終え、美琴のところへ戻ろうと、人の波間を縫っていくと、振り袖の女子に道を塞がれた。
俺は、不快に思い眉を上げると、その人は俺を見て、笑顔を向けた。
「はじめまして、赤司征十郎さん。」
「……。」
「私、鳳凰院香澄です。…そんな怖い顔しないでください。
私も、西園寺さんと同じ立場の人間です。」
「同じ立場…?」
「私も、彼女と同じ、貴方の婚約者の1人。来週に、洛山高校へ編入しますの。
どうぞ宜しくお願いしますね、征十郎さん。」
長い黒髪に赤い椿の髪飾り、赤い振り袖に金の帯。
明らかに、金持ちだと見せびらかせている。
「…鳳凰院。名家ですね。」
「征十郎さんのお家も由緒正しき名家ですわ。
…でも、何故私より先に西園寺さんが呼ばれたのかしら?
彼女、一般家庭の娘さんですよね?確かに、ヨーロッパでの自動車産業で、まあまあの財があるようですが、所詮成金。貴方や私の家柄には合わないように思いますわ。」
そう言う赤い唇は、扇子の後ろに隠れたが、人を落として笑っている彼女が、嫌いだ。
イライラを通り越して、殺意さえ芽生える。
「…それ以上、彼女を愚弄してみろ。殺す。」
みなぎる殺気を全面に出し、彼女を後退らせる。
その隙に、俺は、美琴の元へ急いだ。