第13章 魔法な時間 パーティー会場にて
[征十郎]
「お集まりの皆様……」
壇上に上がり挨拶をする父を見上げながら、俺は、今日集まっている人物たちを確認する。
『…今日の集まりは、関西地区の勢力拡大、地盤作りか……。』
“赤司家”は、由緒ある家柄と、幼い頃から教え込まれてきた。
実際、経済界に君臨し、政財界にも顔がきく。
日本のトップを走る企業を担っている。
そんな父は、近年、関西への投資も慈善事業だと言って勧めている。
『本命は、海外。
…最近はアジアの市場が思わしくないから、攻めあぐねているようだが……。
…だから、美琴を使ってドイツ市場の基盤も得ようとしてるってことだろう……。』
父の思惑が手に取るように分かる。
所詮、あの人の血が俺にも流れているってことか…。
「征十郎。」
挨拶を終えた父が、壇上から拍手を背に、俺に話しかけた。
「はい、お父さん。お久しぶりです。」
俺は、表情を引き締め父と対峙する。
「そちらは。」
父の関心は、俺の後ろにいる美琴に向いており、美琴は、緊張した面持ちで、父を見上げていた。
「西園寺美琴さんです。」
「初めまして、西園寺美琴です。…ご挨拶が遅くなり、申し訳ありません。」
美琴は、スカートを摘まみ、小さくお辞儀をしてみせた。
「いいや、征十郎の為に、一時帰国してくださるとは……。
君のお父さんは元気かい?」
「はい、お陰さまで。」
美琴は微笑みながら、会釈する。
「お父さん、またお話しましょう。俺たち、少し食事させて頂きます。」
そう言って、美琴の腰を押して、父から離した。