第12章 魔法な時間 いざ出発!
[美琴]
「えぇ?!お化粧するの?!」
私は、泣きそうな顔をして、鏡越しの優希を見る。
「助けてって言ったのは、美琴でしょ?」
「で、でも…」
「はい、上向いて。」
そう言って、優希は私の顎を持ち上げ、顔にクリームを塗っていく。
「大丈夫、化粧してるかしていないか、分かんないように仕上げてあげるから。」
優希の手は、私の心の準備が出来ないうちに、薄くファンデーションを塗られ、アイラインを入れられる。
「ブラウンのアイラインで丁度良かったね。薄いピンクを目元に乗せるよ…。」
優希ちゃんの優しい手つきに、素直に体が言うことを聞いてしまう。
「…美琴、チーク乗せるよ。軽く乗せるね。」
頬に軽くパフが滑る。
「はい、最後ね。口開いて。」
最後に、口紅筆で私の唇をなぞる。
「口紅だと、美琴には強すぎるから、色つきリップにしとくよ?でも、ラメが少し入ってるから、パーティーでも浮かないとは思う。…さてと。」
そういって、優希が私から離れ、鏡の中は私だけになる。
この前購入したドレスに身を包み、髪の毛を結い上げ、薄く化粧をした、女の子がいる。
いつも見ている自分じゃないみたいで、鏡の中の女の子は、戸惑っていた。
「気に入らない?」
優希は、私の表情に不安になったのか、肩を叩いて後ろから顔を寄せた。
「ううん。…びっくりするぐらい綺麗にしてもらって…。
ありがとう、優希。」
優希にお礼を言って、抱きつこうとするが、
「ストップ。ファンデついちゃうでしょ?」
優希は笑いながら、私の両肩に手を置いて笑った。
「さて、そろそろ時間じゃない?」
すると、私の携帯が震える。
私は、携帯を取り、通話を押す。
《準備は出来た?美琴》
赤司さんの落ち着いた声が、携帯から聞こえてくる。
「は、はい。赤司さん。」
《もうすぐ寮につくよ。》
「分かりました。あの…迎えに来てくださって、ありがとうございます。」
《じゃ、後で。》
そして、赤司さんからの電話が切れた。