第5章 春の日の散歩 [後編]
[美琴]
赤司さんは、お昼御飯の時とは違い、足を崩して座った。
「足は疲れてない?」
「…えぇ。調度いい運動でした。」
頂いたお水を飲んで、彼と話をする。
「明日から、俺は部活があるので、一緒にいられないが、大丈夫?」
「えぇ、大丈夫です。昨日今日、私と一緒にいてくれて、ありがとうございました。とても楽しい時間でした。」
私は、赤司さんと空港で出会ってからのことを思いだし、笑う。
そして、ふと気になって、赤司さんに聞いてみる。
「部活は何をしているんですか?」
「バスケットだよ。」
「バスケット?私の兄もバスケットをしてるんです。じゃあ、練習は大変なんじゃないですか?」
「大変と思ったことはないかな。」
そういって、赤司さんは水を飲んだ。
「ご注文の、ブレンドコーヒーです。ごゆっくりどうぞ。」
青い小花が可愛い白地のカップに入ったコーヒーが運ばれてきた。
カップから、コーヒーのいい香りが漂ってくる。
赤司さんは優雅な指の動きで、カップを持ちコーヒーを楽しんでいる。
私は、小さい壺から砂糖を二粒取り、カップに入れる。
少しかき混ぜてから、一口コーヒーを飲んだ。
「…とっても美味しい…。」
コーヒーの香ばしくまろやかな風味に、ホッと一息つく。
赤司さんと、こうやってゆっくりした時間を楽しむのは、心地がいいと、素直に感じるのだった。