第5章 春の日の散歩 [後編]
[美琴]
清水寺でお参りをして、今私たちは、烏丸商店街を歩いていた。
ドイツに朝市場はあっても、こういう日本独特のアーケード商店街を通るもの久しぶりで、ウキウキする。
「“京のお土産やさん・八ツ橋いかが”?」
私は、店の看板を読んで立ち止まった。
「入ってみる?」
赤司さんは、店を指差し私の顔を見る。
「あ…はい。」
お店の中に入ると、色んな種類の八ツ橋と呼ばれるお菓子が並んでいる。
「どれでも、試食してってくださいねぇ。お茶も飲んでいってくださいな。」
店員さんが、小さい紙コップのお茶を渡してくれた。
「えっと……、これは食べていいってことですか?」
「そうみたいだね。」
二人ともこういう雰囲気は初めてで、回りのお客さんをみて、おずおずと真似をしてみる。
「これは、あんこなんですね。チョコなんていうのもある。」
赤司さんを見ると、彼は貰ったお茶を飲んで、お店の中を観察していた。
私は、チョコ味の八ツ橋に楊枝を刺し、赤司さんに差し出してみた。
「一緒に食べてみませんか?」
「……じゃあ。」
赤司さんは、私から楊枝を受け取り口に入れる。私も口に入れて咀嚼する。
「美味しい。…八ツ橋ってこういう味なんですね。」
「普通はあんこだよ。でも、うん、この味も悪くない。」
赤司さんは食べ終わって、お茶を飲んでいる。
他にも色々な味が用意されていて、楽しくなるけど、私は、さっき食べたチョコ味をお土産に買って、赤司さんの所に戻った。
「この近くに、知り合いに訊いたカフェがあるんだ。そこで休もうか。」
「はい。」
私たちは、お店からでて、商店街から小道に入った。