第29章 夏合宿 ④海と水着と
[征十郎]
美琴は、自分のパーカーのファスナーに手を掛け、ゆっくり前を開いていく。
その様子は
図ったわけではないが…
卑猥だ。
頬を染めて、恥ずかしがっている美琴。
そして、ゆっくりパーカーが開いていく所を、凝視する。
ハラッとパーカーの前が開くと、白が強い水色のビキニが目に飛び込んできた。
胸元にフリルがある、シンプルなビキニ。
「えっと………水着売り場でみんなに選んでもらったんです。
…この淡い水色が、涼しげでみんなに可愛いって言ってもらえて……あ、あの…………。」
恥ずかしそうに、饒舌に話をする美琴が可愛くて、愛らしくて、俺はクスクス笑った。
「せ、征十郎さん…?」
俺が笑ったことで、不安に思ったのか、眉を寄せている美琴の顔があった。
そんな彼女に、俺は安心させるよう、握った手を取った。
「うん。似合ってる。可愛いよ。」
美琴を前に頬が緩む。
俺が笑うと彼女も笑った。
そして、そっと彼女のパーカーの前を合わせ、ファスナーを上まで上げた。
「でも、この格好は他の男に見せたくない。」
そしてニッコリ微笑み、俺は腰を上げた。
「昼食を摂ってくるよ。じゃあ、また。」
そうして、手を軽く振って、メンバーがいるであろう海の家へ向かったのだった。