第29章 夏合宿 ④海と水着と
[美琴]
夏の日差しに、書き込んでいたノートの白いページが眩しい。
眩しさに目を細めて、ペンを走らせていると、突然影になった。
「?」
不思議に思い、上を見ると、私を見下ろしている征十郎さんと目が合った。
「そこ座ってもいいかな?」
一瞬理解出来なくて、息もするのを忘れるほど、彼を見つめてしまう。
「美琴?」
名前を呼ばれて、ハッとする。
「せ、征十郎さんっ?!」
「午前中のトレーニングが終わったから、午後の海へ早めに移動したんだ。…横いい?」
「え?…あ…あの…はい、どうぞ…。」
征十郎さんは、そっと私の横に座った。
すぐ横に征十郎さんがいる。
私は、夏の暑さだけではない火照りを感じて、ノートに顔を埋めた。
「…久しぶりだね。」
「あ…あの…はい。」
ザーーーーー
ザザーーーーー
ピッ ピッ ピッ
波の音
笛の音
部員達の掛け声や、砂浜を走る音
私は頭をあげ、照れながらそっと征十郎さんを伺う。
「…その下は水着?
宿で見た時は、ウェアだったけど、どうして着替えたのかな?」
征十郎さんは涼しい顔で、海を見ながら言った。
いや…心なしか、言葉に刺があるような…。
「へ?あっ!……はい。
…さっき、部員のみんなに海水を掛けられて、Tシャツが濡れてしまって…。
なので、その上からパーカーを着て…。」
すると、征十郎さんがこっちを見た。
「…見たいな。水着。」
「え?せ、征十郎さん?」
真剣な赤い瞳に、ドキッとして困惑する。
すると、征十郎さんゆっくり顔を近づけてきた。
「ここでキスされるか、俺に水着を見せるか。どっちか選んで。」
真剣な征十郎さんの顔が近くて、ドギマギし距離を取ろうとする。
すると、征十郎さんがクスッと笑って口許に手を添えた。
「フフッ。冗談だよ。まぁ、水着が見たいのは本当だけど。」
「…も、もう。征十郎さん…。」
私はクスクスと笑う征十郎さんに釣られて、笑ってしまう。
そして、視界に広がる青に、私は目を細めた。
「…海って綺麗ですね。」
「…。」