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~スミレ色の婚約者~【黒子のバスケ☆赤司】

第25章 ジャンヌ・ダルク


「…私は、神の声は聞こえません。でも、あなたの声が聞きたいです。」

「俺の?」




黒の駒が動いて、また、私の陣形に入ってきた。
征十郎さんは、視線をあげ、私と見つめ合う。


うん。今は、私の知っている征十郎さんだ。




「…私は、征十郎さんが好きです。」

「っ!」



征十郎さんは進軍させ、私の陣形に入ってきた。
私も、また駒を動かす。


征十郎さんは、私を驚いた顔で見つめた。




「大好きです。」




征十郎さんの手が止まる。


そして、目をゆっくり閉じて再び顔をあげた。

黒い駒を動かし、私の駒を捕る。



朝の光が強くなってきた。

窓から差し込む日の光が、私たちを照らす。



そして



「…美琴は、“僕”に気がついているんだろ?」



征十郎さんの左目が、朝の光に照らされて、金色に光った気がする。




「…征十郎さんですね。もう一人の。」

「……。」




征十郎さんは腕を組んで、私を見据える。

そして、私は膝の上に乗せた両手を、握りしめた。




「…怖い?」

「…怖くないと言ったら、嘘になります。
でも………。
決めたんです。
征十郎さんのこと、知っていきたいって。
…あなたが教えてくれる、あなたの事を、全部抱き締めます。」





精一杯の心を込めて、彼に伝わって。


私は、静かに駒を動かす。


きっと、征十郎さんは分かるはず。



次、征十郎さんの手で、勝敗が別れる。
そして、私の意図も気がついているはず。


でも、征十郎さんは駒を進めず、私を見つめたまま。


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