第21章 それぞれの想い
[征十郎]
~数時間前~
今日、美琴が学校に来たらしい。
昼休み、生徒会室から帰るとクラスメイトが、彼女が来たと興奮ぎみに報告してきた。
彼女は、編入当時から隠れた人気がある。
だが、話し掛けるには、女子バスケ部部長:優希をクリアする必要があり、男子達は泣く泣く傍観するしかないらしい。
そんな彼女と話す機会が出来て、相当嬉しかったのか、俺に向かってずいぶん馴れ馴れしい態度をとってきた。
『…優希に、美琴を一人で出歩かせないよう、注意しよう…。』
美琴は俺のだ。
誰にも触れさせたくない。
出来れば、誰の目からも隠してしまいたい。
しかし、彼女も俺もまだ学生で、大人になる前の貴重な時間。
せいぜい、学生でしか味わえない思いがしたい。
俺は、午後の授業を聞きながら、美琴へ思いを馳せた。