第20章 長距離電話
携帯で、涼太の番号を出し、通話にタッチしようとして、指が止まる。
あ……涼太へ連絡するなんて…初めてだ。
頬が赤くなるのを感じる。
私は、涼太の番号をいとおしく撫でると、通話に指が触れてしまった。
「え?!わっ!あっ!!」
あまりの驚きに、携帯を落としそうになり、キャッチする。
「はぁ。セーフ。」
《セーフ?美空っち??》
携帯から、涼太の声が聞こえる。どうやら、通話になっているらしい。
「あ、涼太?!その……突然電話して、ごめんなさい。」
《んーん。全然いいっスよ。美空っちの声が聞けて、嬉しいっス。》
「メッセージ、気がつくの遅くてごめんね。」
《いや、……あれは俺が悪いんス。ちょっとこっちで色々あって、美空っちの声が聞きたくなっただけで…。》
「色々?」
《なんでもないっス。それより、美空っち。》
「なあに?」
《変な奴に言い寄られたり、してないっスか?》
「え?言い寄る?…はぁ。
私は君と違います。普通の学生なんだから。」
《あーーー!美空っちっ!!無自覚すぎっ!!もっと危機感をもって!!》
私は、耳を離した。
涼太のあまりに大きい声に、耳がキーンとしたのだ。
《美空っち、聞いてる?美空っち!》
「…聞いてるよ。っていうか、涼太明日試合でしょ?初戦なんだから、しっかりね。」
《話変えたっスね、美空っち…。
はぁ。分かってるんスか?もう……。
…大丈夫。絶対、勝つっス。》
「うん。明日の報告楽しみにしてる。」
《………美空っち、電話切りたくないっス。》
「……うん。…でも、また明日。電話するからね。」
《今度は俺からするっス。ちゃんと出てくれないと、やっスよ。》
「ふふ。分かった。じゃあ明日。」
《明日。》
涼太との電話を切り、ベンチから空を見上げる。
涼太、ファイトっ!!