第12章 嫉妬。そして…
[涼太]
知ってる。
あの二人は、そんな仲じゃないって。
アイツには、彼女がいるって聞いてる。
でも
苦しい。
美空っちは、俺のものじゃない。
俺のものなら、「俺のっ!」って、アイツから奪えるのに。
俺のものなら、こんなに苦しい気持ち、美空っちを抱き締めて、忘れられるのに。
彼女は、俺のじゃない。
気がついたら、練習で使ってる体育館まで走ってきていた。
俺は、片付け忘れたバスケットボールを見つけて、手に取る。
シーーンとした電気がついていない体育館。
俺は、ドリブルをする。
「こんな苦しい片想いをするなんて、聞いてないっス…」
長くなった前髪が、俺の目を隠す。
なに、やってんだろう。
俺は、こんな自分の姿が滑稽に見えて、笑ってしまう。
そして、笑った後、ボールを思いっきり壁に投げつけた。
「黄瀬くんっ!」
顔をあげる。
「美空…っち?」
体育館の入り口に、息を切らした美空っちが立っていた。