第12章 嫉妬。そして…
[美空]
黄瀬くんを見つけた。
体育館で大きな音がして、中を見たら、いた。
「…黄瀬くん。」
私は、体育館の中に入った。
少しだけ、縮まる距離。
すると、黄瀬くんは私を見ないで、静かな声で呟いた。
「…ねぇ。美空っち。…なんで、俺のとこ、一番にきてくれないっスか…?」
こんな黄瀬くんをはじめてみる。
肩が震えている。
怒ってる?
「黄瀬くん…。」
私は、一歩、彼に近づく。
「っ…なんで、いつまでも…っ…俺のこと君付けするんスか?!」
言葉を荒げる黄瀬くんに、ビクッと身体が驚く。
それでも、逃げたくない。
私は、また一歩、彼に近づく。
後、一歩で、君の前に着く。
「分かってるっ!片想いだって。俺だけが美空っちを好きだって!…でも…なんか…もう…辛いっス。」
あ、ダメだ。
「…涼太。」
私は、口にしてしまった。
「…美空…っち?」
君の目が、私を捉える。
「…もうダメ。」
また一歩、君に近づく。
ほら、君の目の前。
「え?」
驚いて私を見る、涼太。
「私は、涼太が好きです。」
心から溢れだした言葉。
ずっと封印していた、この言葉が、一筋の涙と一緒に零れた。