第1章 派手な後輩
「あー……っと。つまり、卯月サンが撮った写真をこの人が欲しいってことっスか?」
自分の頭を軽く触りながら、そう答えると、
「そうなの。迷惑なお願いだって分かってるけど、いいかしら?」
知らないところで、隠し撮りなんかをされている自分としては、断りをいれられるのも初めてで、
「分かったっス。どーぞ、お好きに。でも、転売とかは止めて欲しいっス。」
「良かった、ありがとう。」
そう卯月サンは笑って答えた。
そして、横で両手を組み祈って見守っていた隣の女子の背中を叩いた。
「良かったね、杏奈。ちゃんとお礼言ってよね。」
「あ、ありがとう!黄瀬くん!…あたし宝物にするからね!!」
勢いよく俺にお礼を言うと、卯月サンを置いて購買から走っていってしまった。
「あー…もう。…ごめんなさい、モデルの君にこんなお願いして。」
卯月サンは俺の顔を見ないで、謝った。
「いいんスよ。俺、撮られ慣れてるっスから。」
「…モデルを本気でやりたいなら、タダの仕事は注意しなよ。」
そう言って、逃げていった女子の後を追いかけて行ってしまった。
“モデルの仕事を本気でやるなら”…か…
言われた意味を考えて、ゆっくり購買を後にした。