第1章 派手な後輩
それからが、大変だった。
昼休みの、それでなくても人が多い購買で、黄瀬くんの写真をお願いするなんて…
「卯月サン、私も黄瀬くんの写真…。」
「あー…えっと、簡単に写真はあげられないよ。黄瀬くんと、そんな約束してないし。」
「でも、杏奈は約束したんでしょ?ならいいじゃない。」
「…杏奈はちゃんと本人と……はぁ、分かった。じゃあ、撮影始まる前に、黄瀬くんに聞いてみる。それで駄目って言われたら、仕方ないけど、杏奈にも渡さないよ。…これでどう?」
「絶対貰えるよう、ちゃんと交渉してよね。」
「…分かったわよ……。」
これで何人目だろう。
来る女子来る女子に同じ質問をされ、同じ問いをする。
放課後まで後一限を残して、既に気持ちのボルテージがレッドゾーン。
自分の席で突っ伏していると。
「おい、卯月。」
力か入らない上半身に鞭打って、頭だけ上にあげると、同じクラスの笠松が立っていた。
「あぁ、笠松くん。どうしたの?」
「うちの黄瀬のせいで、困ってるって本当か?」
神妙な面持ちで聞いてきた笠松に、力なく手を振る。
「違う、違う。どっちかというと、私がこれから困らせてしまう系だよ。」
はぁーーー…っと盛大なため息をつく。
「ごめんね、美空。あたしが我が儘言ったから。」
ずっと私を見ていた杏奈が、すまなそうに私に顔を近づける。
「美空が辛かったら、やっぱり黄瀬くんの写真諦めるよ?」
眉を寄せて、残念そうな顔で言われて、嘆息する。
「うん、黄瀬くんに再度聞いてみて、駄目だったら、杏奈にも写真はあげられないからね?分かった?」
「うん。」
そう約束して、杏奈と笑った。
「?何か分かんないけど、黄瀬の奴のせいで困ったことが有ったら言ってくれ。部員の責任は、部長の俺の責任だから。」
真面目な顔をして、心配してくれる笠松に、笑いかけた。
「今日は宜しくね、バスケット部部長さん。」
「おう。」
そして、放課後になった。