第10章 新しいカメラマン
「美空っち。」
突然後ろから呼ばれて、振り返った。
黄瀬くんを久しぶりに見た。
「試合、来てたんスね。」
「うん。IH出場、おめでとう。」
黄瀬くんは、持っていたボールを器用に回している。
「美空センパイ…」
胡桃ちゃんは、黄瀬くんにビックリして、私の後ろに隠れてしまう。
「その人、新しいカメラマンっスよね?」
「そう。黄瀬くんと同じ一年生。胡桃ちゃんっていうの。」
「胡桃です。あの、よろしくお願いします。」
胡桃ちゃんは、私の後ろから小さくお辞儀する。
「ふーん、胡桃サンっスね。よろしく。」
あまり興味がないのか、黄瀬くんは気のない返事しかしなかった。
「美空センパイ。私、先に学校に帰ってます。じゃあ、黄瀬くん、さよなら。」
「待って、胡桃ちゃん!」
私が止めるのも聞かず、胡桃ちゃんは先に学校へ帰ってしまった。