第10章 新しいカメラマン
黄瀬くんとの間に、気まずい空気が流れた。
顔が見れず、下を向くと、黄瀬くんの足が見えた。
「足…。」
私は意を決して、黄瀬くんに話しかけた。
「んー?なんっスか?」
「黄瀬くん、足怪我してるの?」
「え?…」
「今日のプレー、右足に体重が掛かると、表情が固くなった気がして。」
「……なんでもお見通しっスね、美空っち。」
黄瀬くんの言葉に、はっとして、顔を上げる。
すると、黄瀬くんは辛そうな顔をしていた。
「俺のこと、よく見てくれてる…。」
「黄瀬くん…。」
そんな顔を見たら、私も辛い。
自分の心臓が、ズキズキ痛む。
いけない。
黄瀬くんに悟られちゃう。
私は咄嗟に、後ろを向く。
「足、ちゃんと病院で見てもらって。じゃあ!」
「美空っち!!」
黄瀬くんに、右手を掴まれ、帰れない。
「……俺…。」
「…私、黄瀬くんのプレーが好き。
応援してるよ。IH、優勝してね。」
私は、ゆっくり深呼吸して、黄瀬くんを振り返る。
「…。了解っス。」
私は笑った。
そして、黄瀬くんも笑った。