第7章 練習試合の後
杏奈の後ろから、黄瀬くんの写真を見ている。ご本人が。
「?!き、黄瀬くん?!」
「これっスか?この前の試合の写真。」
杏奈は驚きすぎて、目を白黒させている。
「そうよ。黄瀬くん。」
私は、黄瀬くんを見て微笑する。
「校内新聞も見たっスよ。…試合負けちゃったから、カッコ悪いんスけどね。
…でも、あの写真は、あの時のくやしい気持ち、差し引いても、いい写真だって思えるっス。すごいんスね、美空っち。」
黄瀬くんはいま、私を名前で呼んでいたような…?
「…私、君の先輩。センパイつけてよ…。」
私は、この前とは全然違う黄瀬くんに戸惑いながらも主張してみる。
「俺、尊敬してる人には、っちって付けて呼びたいんス。」
「じゃあ、笠松くんは?」
「笠松センパイ。」
「私は?」
「美空っち。」
「………」
不毛な会話に、脱力してしまう。
「私は?私は?」
そんな中、杏奈は、自分を指さし名前呼びをして欲しそうに、キャッキャしている。
「えっと……」
黄瀬くんは困った顔になり、何故か私に助けを求める目をする。
『何故に。』
「…はぁ、杏奈先輩よ。黄瀬くん。」
「あぁ!じゃ、杏奈さんっスね。」
黄瀬くんは、手をぽんっと叩いて、話の決着を着けようとする。
「じゃ、私は?」
「美空っち。」
「………」
さも当然のように、黄瀬くんは答えるので、私は撃沈してしまう。