第7章 練習試合の後
【涼太】
先週の練習試合、俺は人生初の負けを知った。
くやしさで、胸の中に棘が刺さったような感覚がある。
月曜日、新聞部が号外として、バスケ部の特集を発行していた。
『あーー、負けた試合の記事なんて、何で全校生徒に知らしめなきゃいけないんスか…。』
俺は、少し暗い気持ちになって、ちらっと、校内新聞をみると、俺のプレー写真が大きく掲載されていた。
『俺、こんな顔してプレーしてるんスか…。』
この写真に写っている“黄瀬涼太”は、バスケを楽しそうに、がむしゃらにプレーしていた。
「かっこいい!!」
「私ー、卯月さんに頼んであるんだぁ~」
「えー何何?!」
「黄瀬くんの写真、もらう約束になってるのぉー!!」
校内新聞の前で、女子たちが口々に噂をしている。
「あぁ!!黄瀬くん!!!」
そうしている間に、女子生徒に見つかり、いつの間にか人だかりになる。
「黄瀬くん、試合は残念だったみたいだけど、次の試合、頑張ってね!!」
「あーー…ありがとう。じゃ!」
そういって、女子集団から逃れたのだった。
『あんな写真が、撮れるって。ホント、すげー、尊敬しちゃうっスね。』
久々の、尊敬できる人を見つけて、俺は自然と顔がにやけていた。