第5章 無邪気な横暴
《数時間前》
昼休みに現れた黄瀬くんは、私に『外で写真撮りません?』と言って教室から連れ出した。
私は一応、自分用に持っているデジカメを持って、黄瀬くんの後を追った。
黄瀬くんは屋上の扉を開いて、外に出た。私も後を追い掛けて、屋上に出る。
「で、本当に撮影会でもするつもり?」
私は苦笑しながら、自分用のデジカメを黄瀬くんに構えていうと、黄瀬くんは振り返った。
「俺、昨日、同中の仲間のとこ行ってきたんス。」
黄瀬くんの黄色い髪の毛が、屋上に吹く風に遊ばれている。
「中学の仲間?」
私は構えていたデジカメを下げて、黄瀬くんを見る。
「そうっス。知らないっスか?東京で《帝光中のキセキの世代》って、結構有名だったみたいなんスけど。」
「んー…知らない。私、写真以外疎くて。」
「はは、なんか卯月センパイって、そんな感じポイ。」
「誉められてる気がしない…。」
黄瀬くんの言葉に、複雑な気持ちになりながら、話を聞いてあげる。
「で?会えたの?」
「会えたんスけど…。その人、あ、黒子っちっていうんスけど、黒子っち、もう誠凛高校の選手になってて。」
「ん?…うん。」
なんか、変なこと言ってるな、黄瀬くん。そう感じながらも最後まで聞いてあげることにした。
「俺、どうしても黒子っちに傍にいて欲しくて、『俺の高校入って』ってお願いしてみたんス。」
「……すごいこと言ったね。」
「何でっスか?!…自分の気持ち…嘘つきたくないんス。…だから、黒子っちに言ったんス。」
「で?黒子くんは何て言ったの?」
「丁重にお断りさせて頂きます。って、ヒドくないっスか?!」
「いや、当然かも。」
「なんでっスかーーー!!」
ショックを受けているのか、目の前の黄瀬くんは本当に泣きそうな顔になっている。
「……中学の頃の進路って、自分で決める、初めての分かれ道でしょ。黄瀬くんは、黒子くんの選んだ道を、信じてあげないの?」
「なんなんスか?信じるって。」
黄瀬くんは、ワケわかんないという顔で、私を見ている。
「大切な友達が悩んで決めた道なんだから、その道が間違っているはずないよ。」
私は、黄瀬くんの憤りを強く感じて困って笑う。