第5章 無邪気な横暴
すると、黄瀬くんは私に背を向けて、空に両腕を上げて伸びをした。
「……来週、誠凛と練習試合があるって聞いたんス。そん時、試合に勝ったら、黒子っちをもらうって約束したんスよ。」
無茶苦茶なその言葉に、私は眉を寄せる。
「………そう。黄瀬くんは勝つの?」
「俺、試合で負けたことないんスよ?…勝つっス。本気で。」
我が儘で無邪気な横暴を感じて、私は何て言っていいのか分からなかった。
来週の練習試合は、きっと黄瀬くんの分岐点。
良くも悪くも彼が変わる試合だと思った。
「……来週の練習試合。…写真撮らせてくれますか?」
黄瀬くんは、こっちを見て明るく「いいっスよ。」と答えたのだった。