第37章 ☆海常高校文化祭☆
[胡桃]
その時だった、順番待ちの人たち、特に女子生徒が騒いでいた。
私は次のカップルにストップを掛け、首を傾げた。そして、騒ぎが起こっている方向を見ると人を掻き分けて進んでくる人がいる。
「黄瀬くん?」
私は撮影する手を止めて待つと、すぐ黄瀬くんが私の前に現れた。
「あれっ?!胡桃っち?!美空は?」
突然現れた黄瀬くんに、私は目を見開いて驚いた。
「え?美空センパイ??センパイならプールですけど…?あの、居場所なら携帯で連絡ついたんじゃないんですか?」
「えっ?!プール??…って、あーーー!確かにっ!何やってんだろ、俺…。携帯で連絡とれば良かったんだ!って、美空は撮影中連絡取れないじゃん!」
「いえ、メールは見てくれますよ。」
面白いほどワタワタしている黄瀬くんを改めて見ると、白くて長いお耳に、大きな時計を首から掛けている…
「…黄瀬くん、それ、時計ウサギさんですか?」
なんだか面白くて、クスクス笑い、カメラを構えてシャッターを切った。
「シャッターチャンスでした。」
ファインダーから顔を出して、舌を出すと、黄瀬くんは苦笑していた。
そして、白くて長い耳を一触りして、笑う。
「そ、これバスケ部の出し物の衣装っス。じゃ、今の写真は美空の居場所を教えてくれたお礼ってことで!」
そういうと又人を掻き分けて、走り去ってしまった。
掻き分けている最中も女子の悲鳴が聞こえて、またクスと笑うと、橋の両サイドで待つカップルに視線を戻した。
「さってと、撮影を再開しますよ!カップルさん、橋をゆっくり一歩ずつ歩いて行ってください。」