第37章 ☆海常高校文化祭☆
[涼太]
文化祭当日
「きゃーっ、黄瀬くんっ!!」
「耳カワイーィ!!」
「あはは、ありがとっ。バスケ部のアリスのティーパーティー、ヨロシクっス☆」
俺は、足取り軽く廊下を歩き、大きなバスケ部の宣伝看板を片肩に担いで、声を掛けてきた女の子たちに気軽に手を振った。
今日の俺の格好は、燕尾服のように裾の長いワインレッドのジャケットに、赤チェックの大きなリボンタイ、ブラウンのサルエルパンツに身を包み、その首にはバスケットボールぐらいの大きさの手作り時計を首から下げていた。
何より、彼女たちが誉めたのは、この頭についている、白くて長いウサ耳。
ジャケットに隠れているけど、尻尾もパンツのおしり部分についていたりする。
(芸が細かいっスね!!)
「体育館裏のティーパーティー、みんな来てねぇー。」
俺は、頭についてるウサ耳を揺らして、文化祭に湧く校内の廊下を練り歩いていくと…。
「黄瀬くん、可愛い!!」
「黄瀬くん、一緒に写真撮って!!」
いつも何だかんだで女子に囲まれることが多いけど、今日はその比じゃないほど囲まれてしまった。
俺は苦笑して、とにかく外に出ようと、廊下の窓を指差した。
「あー…ほら、ここ廊下だから、囲まないでー。バスケ部のセンパイたちも可愛いコスプレしてるから、見に行ってみてぇー。」
すると、俺を囲っていた女子たちがキャーキャーと騒ぎながら離れてくれた。
「え?!じゃあ、笠松さんも?」
彼女たちの興味が、自分からセンパイたちに変わったのを敏感に感じて、もう一押ししてみた。
「笠松センパイはイカレ帽子屋で、森山センパイはチャシャ猫、小堀センパイはハートの王様、早川センパイは…ヒ・ミ・ツ☆見てのお楽しみ♪」
片目を瞑って笑顔を作ると、とたんに女子の黄色い悲鳴が上がって、俺は一目散に逃げ出してみた。